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立正安国論
27ページ

 主人の曰く、余は是れ頑愚にして敢て賢を存せず唯経文に就いて聊か所存を述べん、抑も治術の旨内外の間其の文幾多ぞや具に挙ぐ可きこと難し、但し仏道に入つて数ば愚案を廻すに謗法の人を禁めて正道の侶を重んぜば国中安穏にして天下泰平ならん。
 即ち涅槃経に云く「仏の言く唯だ一人を除いて余の一切に施さば皆讃歎す可し、純陀問うて言く云何なるをか名けて唯除一人と為す、仏の言く此の経の中に説く所の如きは破戒なり、純陀復た言く、我今未だ解せず唯願くば之を説きたまえ、仏純陀に語つて言く、破戒とは謂く一闡提なり其の余の在所一切に布施すれば皆讃歎すべく大果報を獲ん、純陀復た問いたてまつる、一闡提とは其の義何ん、仏言わく、純陀若し比丘及び比丘尼・優婆塞・優婆夷有つて麤悪の言を発し正法を誹謗し是の重業を造つて永く改悔せず心に懺悔無らん、是くの如き等の人を名けて一闡提の道に趣向すと為す、若し四重を犯し五逆罪を作り自ら定めて是くの如き重事を犯すと知れども而も心に初めより怖畏懺悔無く肯て発露せず彼の正法に於て永く護惜建立の心無く毀呰・軽賤して言に過咎多からん、是くの如き等の人を亦た一闡提の道に趣向すと名く、唯此くの如き一闡提の輩を除いて其の余に施さば一切讃歎せん」と。
 又云く「我れ往昔を念うに閻浮提に於て大国の王と作れり名を仙予と曰いき、大乗経典を愛念し敬重し其の心純善に麤悪嫉恡有ること無し、善男子我爾の時に於て心に大乗を重んず婆羅門の方等を誹謗するを聞き聞き已つて即時に其の命根を断ず、善男子是の因縁を以て是より已来地獄に堕せず」と、又云く「如来昔国王と為りて菩薩の道を行ぜし時爾所の婆羅門の命を断絶す」と、又云く「殺に三有り謂く下中上なり、下とは蟻子乃至一切の畜生なり唯だ菩薩の示現生の者を除く、下殺の因縁を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して具に下の苦を受く、何を以ての故に是の諸の畜生に微善根有り是の故に殺す者は具に罪報を受く、中殺とは凡夫の人より阿那含に至るまで是

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
立正安国論 39 北条時頼 鎌倉

日蓮大聖人御書

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立正安国論 27ページ

 主人の曰く、余は是れ頑愚にして敢て賢を存せず唯経文に就いて聊か所存を述べん、抑も治術の旨内外の間其の文幾多ぞや具に挙ぐ可きこと難し、但し仏道に入つて数ば愚案を廻すに謗法の人を禁めて正道の侶を重んぜば国中安穏にして天下泰平ならん。
 即ち涅槃経に云く「仏の言く唯だ一人を除いて余の一切に施さば皆讃歎す可し、純陀問うて言く云何なるをか名けて唯除一人と為す、仏の言く此の経の中に説く所の如きは破戒なり、純陀復た言く、我今未だ解せず唯願くば之を説きたまえ、仏純陀に語つて言く、破戒とは謂く一闡提なり其の余の在所一切に布施すれば皆讃歎すべく大果報を獲ん、純陀復た問いたてまつる、一闡提とは其の義何ん、仏言わく、純陀若し比丘及び比丘尼・優婆塞・優婆夷有つて麤悪の言を発し正法を誹謗し是の重業を造つて永く改悔せず心に懺悔無らん、是くの如き等の人を名けて一闡提の道に趣向すと為す、若し四重を犯し五逆罪を作り自ら定めて是くの如き重事を犯すと知れども而も心に初めより怖畏懺悔無く肯て発露せず彼の正法に於て永く護惜建立の心無く毀呰・軽賤して言に過咎多からん、是くの如き等の人を亦た一闡提の道に趣向すと名く、唯此くの如き一闡提の輩を除いて其の余に施さば一切讃歎せん」と。
 又云く「我れ往昔を念うに閻浮提に於て大国の王と作れり名を仙予と曰いき、大乗経典を愛念し敬重し其の心純善に麤悪嫉恡有ること無し、善男子我爾の時に於て心に大乗を重んず婆羅門の方等を誹謗するを聞き聞き已つて即時に其の命根を断ず、善男子是の因縁を以て是より已来地獄に堕せず」と、又云く「如来昔国王と為りて菩薩の道を行ぜし時爾所の婆羅門の命を断絶す」と、又云く「殺に三有り謂く下中上なり、下とは蟻子乃至一切の畜生なり唯だ菩薩の示現生の者を除く、下殺の因縁を以て地獄・畜生・餓鬼に堕して具に下の苦を受く、何を以ての故に是の諸の畜生に微善根有り是の故に殺す者は具に罪報を受く、中殺とは凡夫の人より阿那含に至るまで是


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