御書本文
く、露とや消え煙とや登りけん今の友も又みえず、我れいつまでか三笠の雲と思ふべき春の花の風に随ひ秋の紅葉の時雨に染まる、是れ皆ながらへぬ世の中のためしなれば法華経には「世皆牢固ならざること水沫泡焰の如し」とすすめたり「以何令衆生・得入無上道」の御心のそこ順縁・逆縁の御ことのは已に本懐なれば暫くも持つ者も又本意にかないぬ又本意に叶はば仏の恩を報ずるなり、悲母深重の経文・心安ければ唯我一人の御苦みもかつかつやすみ給うらん、釈迦一仏の悦び給うのみならず諸仏出世の本懐なれば十方三世の諸仏も悦び給うべし「我即歓喜・諸仏亦然」と説かれたれば仏悦び給うのみならず神も即ち随喜し給うなるべし、伝教大師・是を講じ給いしかば八幡大菩薩は紫の袈裟を布施し、空也上人是を読み給いしかば松尾の大明神は寒風をふせがせ給う、されば「七難即滅七福即生」と祈らんにも此の御経第一なり現世安穏と見えたればなり、他国侵逼の難・自界叛逆の難の御祈禱にも此の妙典に過ぎたるはなし、令百由旬内無諸衰患と説かれたればなり。
然るに当世の御祈禱はさかさまなり先代流布の権教なり末代流布の最上真実の秘法にあらざるなり、譬えば去年の暦を用ゐ烏を鵜につかはんが如し是れ偏に権教の邪師を貴んで未だ実教の明師に値わせ給はざる故なり、惜いかな文武の卞和があら玉何くにか納めけん、嬉いかな釈尊出世の髻の中の明珠今度我身に得たる事よ、十方諸仏の証誠として・いるがせならず、さこそは「一切世間・多怨難信」と知りながら争か一分の疑心を残して決定無有疑の仏にならざらんや、過去遠遠の苦みは徒らにのみこそ・うけこしか、などか暫く不変常住の妙因をうへざらん・未来・永永の楽みは・かつかつ心を養ふともしゐてあながちに電光朝露の名利をば貪るべからず、「三界無安・猶如火宅」は如来の教へ「所以諸法・如幻如化」は菩薩の詞なり、寂光の都ならずは何くも皆苦なるべし本覚の栖を離れて何事か楽みなるべき、願くは「現世安穏・後生善処」の妙法を持つのみこそ只今生の名聞・後世の弄引なるべけれ須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ他をも勧んのみこそ今生人界の思出なるべき、南無
タイトル | 聖寿 | 対告衆 | 述作地 |
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持妙法華問答抄 | 42 | 鎌倉 |
日蓮大聖人御書
検索結果詳細 御書本文
持妙法華問答抄 467ページ
く、露とや消え煙とや登りけん今の友も又みえず、我れいつまでか三笠の雲と思ふべき春の花の風に随ひ秋の紅葉の時雨に染まる、是れ皆ながらへぬ世の中のためしなれば法華経には「世皆牢固ならざること水沫泡焰の如し」とすすめたり「以何令衆生・得入無上道」の御心のそこ順縁・逆縁の御ことのは已に本懐なれば暫くも持つ者も又本意にかないぬ又本意に叶はば仏の恩を報ずるなり、悲母深重の経文・心安ければ唯我一人の御苦みもかつかつやすみ給うらん、釈迦一仏の悦び給うのみならず諸仏出世の本懐なれば十方三世の諸仏も悦び給うべし「我即歓喜・諸仏亦然」と説かれたれば仏悦び給うのみならず神も即ち随喜し給うなるべし、伝教大師・是を講じ給いしかば八幡大菩薩は紫の袈裟を布施し、空也上人是を読み給いしかば松尾の大明神は寒風をふせがせ給う、されば「七難即滅七福即生」と祈らんにも此の御経第一なり現世安穏と見えたればなり、他国侵逼の難・自界叛逆の難の御祈禱にも此の妙典に過ぎたるはなし、令百由旬内無諸衰患と説かれたればなり。
然るに当世の御祈禱はさかさまなり先代流布の権教なり末代流布の最上真実の秘法にあらざるなり、譬えば去年の暦を用ゐ烏を鵜につかはんが如し是れ偏に権教の邪師を貴んで未だ実教の明師に値わせ給はざる故なり、惜いかな文武の卞和があら玉何くにか納めけん、嬉いかな釈尊出世の髻の中の明珠今度我身に得たる事よ、十方諸仏の証誠として・いるがせならず、さこそは「一切世間・多怨難信」と知りながら争か一分の疑心を残して決定無有疑の仏にならざらんや、過去遠遠の苦みは徒らにのみこそ・うけこしか、などか暫く不変常住の妙因をうへざらん・未来・永永の楽みは・かつかつ心を養ふともしゐてあながちに電光朝露の名利をば貪るべからず、「三界無安・猶如火宅」は如来の教へ「所以諸法・如幻如化」は菩薩の詞なり、寂光の都ならずは何くも皆苦なるべし本覚の栖を離れて何事か楽みなるべき、願くは「現世安穏・後生善処」の妙法を持つのみこそ只今生の名聞・後世の弄引なるべけれ須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ他をも勧んのみこそ今生人界の思出なるべき、南無
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