御書本文
上に生れて五衰をうく、此くの如く三界の間を車輪のごとく回り父子の中にも親の親たる子の子たる事をさとらず夫婦の会遇るも会遇たる事をしらず、迷へる事は羊目に等しく暗き事は狼眼に同じ、我を生たる母の由来をもしらず生を受けたる我が身も死の終りをしらず、嗚呼受け難き人界の生をうけ値い難き如来の聖教に値い奉れり一眼の亀の浮木の穴にあへるがごとし、今度若し生死のきづなをきらず三界の籠樊を出でざらん事かなしかるべし・かなしかるべし。
爰に或る智人来りて示して云く汝が歎く所実に爾なり此くの如く無常のことはりを思い知り善心を発す者は麟角よりも希なり、此のことはりを覚らずして悪心を発す者は牛毛よりも多し、汝早く生死を離れ菩提心を発さんと思はば吾最第一の法を知れり志あらば汝が為に之を説いて聞かしめん、其の時愚人座より起つて掌を合せて云く我は日来外典を学し風月に心をよせて・いまだ仏教と云う事を委細にしらず願くば上人我が為に是を説き給へ、其の時上人の云く汝耳を伶倫が耳に寄せ目を離朱が眼にかつて心をしづめて我が教をきけ汝が為に之を説かん夫れ仏教は八万の聖教多けれども諸宗の父母たる事・戒律にはしかずされば天竺には世親・馬鳴等の薩埵・唐土には慧曠・道宣と云いし人・是を重んず、我が朝には人皇四十五代・聖武天皇の御宇に鑒真和尚・此の宗と天台宗と両宗を渡して東大寺の戒壇之を立つ爾しより已来当世に至るまで崇重年旧り尊貴日に新たなり、就中極楽寺の良観上人は上一人より下万民に至るまで生身の如来と是を仰ぎ奉る彼の行儀を見るに実に以て爾なり、飯嶋の津にて六浦の関米を取つては諸国の道を作り七道に木戸をかまへて人別の銭を取つては諸河に橋を渡す慈悲は如来に斉しく徳行は先達に越えたり、汝早く生死を離れんと思はば五戒・二百五十戒を持ち慈悲をふかくして物の命を殺さずして良観上人の如く道を作り橋を渡せ是れ第一の法なり、汝持たんや否や。
愚人弥掌を合せて云く能く能く持ち奉らんと思ふ具に我が為に是を説き給へ抑五戒・二百五十戒と云う事
タイトル | 聖寿 | 対告衆 | 述作地 |
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聖愚問答抄上 | 44 | 鎌倉 |
日蓮大聖人御書
検索結果詳細 御書本文
聖愚問答抄上 475ページ
上に生れて五衰をうく、此くの如く三界の間を車輪のごとく回り父子の中にも親の親たる子の子たる事をさとらず夫婦の会遇るも会遇たる事をしらず、迷へる事は羊目に等しく暗き事は狼眼に同じ、我を生たる母の由来をもしらず生を受けたる我が身も死の終りをしらず、嗚呼受け難き人界の生をうけ値い難き如来の聖教に値い奉れり一眼の亀の浮木の穴にあへるがごとし、今度若し生死のきづなをきらず三界の籠樊を出でざらん事かなしかるべし・かなしかるべし。
爰に或る智人来りて示して云く汝が歎く所実に爾なり此くの如く無常のことはりを思い知り善心を発す者は麟角よりも希なり、此のことはりを覚らずして悪心を発す者は牛毛よりも多し、汝早く生死を離れ菩提心を発さんと思はば吾最第一の法を知れり志あらば汝が為に之を説いて聞かしめん、其の時愚人座より起つて掌を合せて云く我は日来外典を学し風月に心をよせて・いまだ仏教と云う事を委細にしらず願くば上人我が為に是を説き給へ、其の時上人の云く汝耳を伶倫が耳に寄せ目を離朱が眼にかつて心をしづめて我が教をきけ汝が為に之を説かん夫れ仏教は八万の聖教多けれども諸宗の父母たる事・戒律にはしかずされば天竺には世親・馬鳴等の薩埵・唐土には慧曠・道宣と云いし人・是を重んず、我が朝には人皇四十五代・聖武天皇の御宇に鑒真和尚・此の宗と天台宗と両宗を渡して東大寺の戒壇之を立つ爾しより已来当世に至るまで崇重年旧り尊貴日に新たなり、就中極楽寺の良観上人は上一人より下万民に至るまで生身の如来と是を仰ぎ奉る彼の行儀を見るに実に以て爾なり、飯嶋の津にて六浦の関米を取つては諸国の道を作り七道に木戸をかまへて人別の銭を取つては諸河に橋を渡す慈悲は如来に斉しく徳行は先達に越えたり、汝早く生死を離れんと思はば五戒・二百五十戒を持ち慈悲をふかくして物の命を殺さずして良観上人の如く道を作り橋を渡せ是れ第一の法なり、汝持たんや否や。
愚人弥掌を合せて云く能く能く持ち奉らんと思ふ具に我が為に是を説き給へ抑五戒・二百五十戒と云う事
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