御書本文

法華初心成仏抄
553ページ

 問うて云く無智の人も法華経を信じたらば即身成仏すべきか、又何れの浄土に往生すべきぞや、答えて云く法華経を持つにおいては深く法華経の心を知り止観の坐禅をし一念三千・十境・十乗の観法をこらさん人は実に即身成仏し解を開く事もあるべし、其の外に法華経の心をもしらず無智にしてひら信心の人は浄土に必ず生べしと見えたり、されば生十方仏前と説き或は即往安楽世界と説きき、是の法華経を信ずる者の往生すと云う明文なり、之に付いて不審あり其の故は我が身は一にして十方の仏前に生るべしと云う事心得られず、何れにてもあれ一方に限るべし正に何れの方をか信じて往生すべきや、答えて云く一方にさだめずして十方と説くは最もいはれあるなり、所以に法華経を信ずる人の一期終る時には十方世界の中に法華経を説かん仏のみもとに生るべきなり、余の華厳・阿含・方等・般若経を説く浄土へは生るべからず、浄土十方に多くして声聞の法を説く浄土もあり辟支仏の法を説く浄土もあり或は菩薩の法を説く浄土もあり、法華経を信ずる者は此等の浄土には一向生れずして法華経を説き給う浄土へ直ちに往生して座席に列りて法華経を聴聞してやがてに仏になるべきなり、然るに今世にして法華経は機に叶はずと云いうとめて西方浄土にて法華経をさとるべしと云はん者は阿弥陀の浄土にても法華経をさとるべからず十方の浄土にも生るべからず、法華経に背く咎重きが故に永く地獄に堕つべしと見えたり、其人命終入阿鼻獄と云へる是なり。
 問うて云く即往安楽世界阿弥陀仏と云云、此の文の心は法華経を受持し奉らん女人は阿弥陀仏の浄土に生るべしと説き給へり念仏を申しても阿弥陀の浄土に生るべしと云ふ、浄土既に同じ念仏も法華経も等と心え候べきか如何、答えて云く観経は権教なり法華経は実教なり全く等しかるべからず其の故は仏世に出でさせ給いて四十余年の間・多くの法を説き給いしかども二乗と悪人と女人とをば簡ひはてられて成仏すべしとは一言も仰せられざりしに此の経にこそ敗種の二乗も三逆の調達も五障の女人も仏になるとは説き給い候つれ、其の旨経文に見えた

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
法華初心成仏抄 56 岡宮妙法尼 身延

日蓮大聖人御書

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法華初心成仏抄 553ページ

 問うて云く無智の人も法華経を信じたらば即身成仏すべきか、又何れの浄土に往生すべきぞや、答えて云く法華経を持つにおいては深く法華経の心を知り止観の坐禅をし一念三千・十境・十乗の観法をこらさん人は実に即身成仏し解を開く事もあるべし、其の外に法華経の心をもしらず無智にしてひら信心の人は浄土に必ず生べしと見えたり、されば生十方仏前と説き或は即往安楽世界と説きき、是の法華経を信ずる者の往生すと云う明文なり、之に付いて不審あり其の故は我が身は一にして十方の仏前に生るべしと云う事心得られず、何れにてもあれ一方に限るべし正に何れの方をか信じて往生すべきや、答えて云く一方にさだめずして十方と説くは最もいはれあるなり、所以に法華経を信ずる人の一期終る時には十方世界の中に法華経を説かん仏のみもとに生るべきなり、余の華厳・阿含・方等・般若経を説く浄土へは生るべからず、浄土十方に多くして声聞の法を説く浄土もあり辟支仏の法を説く浄土もあり或は菩薩の法を説く浄土もあり、法華経を信ずる者は此等の浄土には一向生れずして法華経を説き給う浄土へ直ちに往生して座席に列りて法華経を聴聞してやがてに仏になるべきなり、然るに今世にして法華経は機に叶はずと云いうとめて西方浄土にて法華経をさとるべしと云はん者は阿弥陀の浄土にても法華経をさとるべからず十方の浄土にも生るべからず、法華経に背く咎重きが故に永く地獄に堕つべしと見えたり、其人命終入阿鼻獄と云へる是なり。
 問うて云く即往安楽世界阿弥陀仏と云云、此の文の心は法華経を受持し奉らん女人は阿弥陀仏の浄土に生るべしと説き給へり念仏を申しても阿弥陀の浄土に生るべしと云ふ、浄土既に同じ念仏も法華経も等と心え候べきか如何、答えて云く観経は権教なり法華経は実教なり全く等しかるべからず其の故は仏世に出でさせ給いて四十余年の間・多くの法を説き給いしかども二乗と悪人と女人とをば簡ひはてられて成仏すべしとは一言も仰せられざりしに此の経にこそ敗種の二乗も三逆の調達も五障の女人も仏になるとは説き給い候つれ、其の旨経文に見えた


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