御書本文

諸経と法華経と難易の事
992ページ

を随えたるが如きなり、日蓮此の義に付て大日経・華厳経・涅槃経等を勘え見候に皆随他意の経経なり、問うて云く其の随他意の証拠如何、答えて云く勝鬘経に云く「非法を聞くこと無き衆生には人天の善根を以て之を成熟す声聞を求むる者には声聞乗を授け縁覚を求むる者には、縁覚乗を授け大乗を求むる者には授くるに大乗を以てす」と云云、易信易解の心是なり、華厳・大日・般若・涅槃等又是くの如し「爾の時に世尊・薬王菩薩に因せて八万の大士に告げたまわく薬王汝是の大衆の中の無量の諸天・竜王・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人と非人と及び比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の声聞を求むる者・辟支仏を求むる者・仏道を求むる者を見るや、是くの如き等類咸く仏前に於て妙法華経の一偈一句を聞いて一念も随喜する者には我皆記を与え授く当に阿○菩提を得べし」文、諸経の如くんば人は五戒・天は十善・梵は慈悲喜捨・魔王には一無遮・比丘の二百五十・比丘尼の五百戒・声聞の四諦・縁覚の十二因縁・菩薩の六度・譬へば水の器の方円に随い象の敵に随つて力を出すがごとし、法華経は爾らず八部・四衆皆一同に法華経を演説す、譬へば定木の曲りを削り師子王の剛弱を嫌わずして大力を出すがごとし。
 此の明鏡を以て一切経を見聞するに大日の三部・浄土の三部等隠れ無し、而るを・いかにやしけん弘法・慈覚・智証の御義を本としける程に此の義すでに隠没して日本国四百余年なり、珠をもつて石にかへ栴檀を凡木にうれり、仏法やうやく顚倒しければ世間も又濁乱せり、仏法は体のごとし世間はかげのごとし体曲れば影ななめなり、幸なるは我が一門仏意に随つて自然に薩般若海に流入す、世間の学者の若きは随他意を信じて苦海に沈まんことなり、委細の旨又又申す可く候、恐恐。
 五月廿六日 日 蓮花押
 富木殿御返事

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
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日蓮大聖人御書

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諸経と法華経と難易の事 992ページ

を随えたるが如きなり、日蓮此の義に付て大日経・華厳経・涅槃経等を勘え見候に皆随他意の経経なり、問うて云く其の随他意の証拠如何、答えて云く勝鬘経に云く「非法を聞くこと無き衆生には人天の善根を以て之を成熟す声聞を求むる者には声聞乗を授け縁覚を求むる者には、縁覚乗を授け大乗を求むる者には授くるに大乗を以てす」と云云、易信易解の心是なり、華厳・大日・般若・涅槃等又是くの如し「爾の時に世尊・薬王菩薩に因せて八万の大士に告げたまわく薬王汝是の大衆の中の無量の諸天・竜王・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人と非人と及び比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の声聞を求むる者・辟支仏を求むる者・仏道を求むる者を見るや、是くの如き等類咸く仏前に於て妙法華経の一偈一句を聞いて一念も随喜する者には我皆記を与え授く当に阿○菩提を得べし」文、諸経の如くんば人は五戒・天は十善・梵は慈悲喜捨・魔王には一無遮・比丘の二百五十・比丘尼の五百戒・声聞の四諦・縁覚の十二因縁・菩薩の六度・譬へば水の器の方円に随い象の敵に随つて力を出すがごとし、法華経は爾らず八部・四衆皆一同に法華経を演説す、譬へば定木の曲りを削り師子王の剛弱を嫌わずして大力を出すがごとし。
 此の明鏡を以て一切経を見聞するに大日の三部・浄土の三部等隠れ無し、而るを・いかにやしけん弘法・慈覚・智証の御義を本としける程に此の義すでに隠没して日本国四百余年なり、珠をもつて石にかへ栴檀を凡木にうれり、仏法やうやく顚倒しければ世間も又濁乱せり、仏法は体のごとし世間はかげのごとし体曲れば影ななめなり、幸なるは我が一門仏意に随つて自然に薩般若海に流入す、世間の学者の若きは随他意を信じて苦海に沈まんことなり、委細の旨又又申す可く候、恐恐。
 五月廿六日 日 蓮花押
 富木殿御返事


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