御書本文
曾谷入道殿許御書
曾谷入道殿許御書 文永十二年三月 五十四歳御作
与曾谷入道 太田金吾
夫れ以れば重病を療治するには良薬を構索し逆謗を救助するには要法には如かず、所謂時を論ずれば正像末教を論ずれば小大・偏円・権実・顕密・国を論ずれば中辺の両国・機を論ずれば已逆と未逆と已謗と未謗と師を論ずれば凡師と聖師と二乗と菩薩と他方と此土と迹化と本化となり、故に四依の菩薩等滅後に出現し仏の付属に随つて妄りに経法を演説したまわず、所詮無智の者未だ大法を謗ぜざるには忽ちに大法を与えず悪人為る上已に実大を謗ずる者には強て之を説く可し、法華経第二の巻に仏舎利弗に対して云く「無智の人の中にして此の経を説くこと莫れ」又第四の巻に薬王菩薩等の八万の大士に告げたまわく「此の経は是れ諸仏秘要の蔵なり分布して妄りに人に授与す可からず」云云、文の心は無智の者の而も未だ正法を謗ぜざるには左右無く此の経を説くこと莫れ、法華経第七の巻不軽品に云く「乃至遠く四衆を見ても亦復故に往いて」等云云、又云く「四衆の中に瞋恚を生じ心不浄なる者有り悪口罵詈して言く是の無智の比丘何れの所従り来りてか」等云云、又云く「或は杖木瓦石を以て之を打擲す」等云云、第二・第四の巻の経文と第七の巻の経文と天地水火せり。
問うて曰く一経二説何れの義に就いて此の経を弘通すべき、答えて云く私に会通すべからず霊山の聴衆為る天台大師並びに妙楽大師等処処に多くの釈有り先ず一両の文を出さん、文句の十に云く「問うて曰く釈迦は出世して踟蹰して説かず今は此れ何の意ぞ造次にして説くは何ぞや答えて曰く本已に善有るには釈迦小を以て之を将護し本未だ善有らざるには不軽・大を以て之を強毒す」等云云、釈の心は寂滅・鹿野・大宝・白鷺等の前四味の小大・権実の諸経・四教八教の所被の機縁・彼等が過去を尋ね見れば久遠大通の時に於て純円の種を下せしかども諸衆一
タイトル | 聖寿 | 対告衆 | 述作地 |
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曾谷入道殿許御書 | 54 | 曾谷入道・太田金吾 | 身延 |
日蓮大聖人御書
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曾谷入道殿許御書
曾谷入道殿許御書 文永十二年三月 五十四歳御作
与曾谷入道 太田金吾
夫れ以れば重病を療治するには良薬を構索し逆謗を救助するには要法には如かず、所謂時を論ずれば正像末教を論ずれば小大・偏円・権実・顕密・国を論ずれば中辺の両国・機を論ずれば已逆と未逆と已謗と未謗と師を論ずれば凡師と聖師と二乗と菩薩と他方と此土と迹化と本化となり、故に四依の菩薩等滅後に出現し仏の付属に随つて妄りに経法を演説したまわず、所詮無智の者未だ大法を謗ぜざるには忽ちに大法を与えず悪人為る上已に実大を謗ずる者には強て之を説く可し、法華経第二の巻に仏舎利弗に対して云く「無智の人の中にして此の経を説くこと莫れ」又第四の巻に薬王菩薩等の八万の大士に告げたまわく「此の経は是れ諸仏秘要の蔵なり分布して妄りに人に授与す可からず」云云、文の心は無智の者の而も未だ正法を謗ぜざるには左右無く此の経を説くこと莫れ、法華経第七の巻不軽品に云く「乃至遠く四衆を見ても亦復故に往いて」等云云、又云く「四衆の中に瞋恚を生じ心不浄なる者有り悪口罵詈して言く是の無智の比丘何れの所従り来りてか」等云云、又云く「或は杖木瓦石を以て之を打擲す」等云云、第二・第四の巻の経文と第七の巻の経文と天地水火せり。
問うて曰く一経二説何れの義に就いて此の経を弘通すべき、答えて云く私に会通すべからず霊山の聴衆為る天台大師並びに妙楽大師等処処に多くの釈有り先ず一両の文を出さん、文句の十に云く「問うて曰く釈迦は出世して踟蹰して説かず今は此れ何の意ぞ造次にして説くは何ぞや答えて曰く本已に善有るには釈迦小を以て之を将護し本未だ善有らざるには不軽・大を以て之を強毒す」等云云、釈の心は寂滅・鹿野・大宝・白鷺等の前四味の小大・権実の諸経・四教八教の所被の機縁・彼等が過去を尋ね見れば久遠大通の時に於て純円の種を下せしかども諸衆一
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