御書本文

千日尼御返事
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子は財と申す経文も・はんべり・所以に経文に云く「其の男女追つて福を修すれば大光明有つて地獄を照し其の父母に信心を顕さしむ」等と申す、設い仏説ならずとも眼の前に見えて候。
 天竺に安足国王と申せし大王は・あまりに馬をこのみて・かいしほどに・後には・かいなれて鈍馬を竜馬となすのみならず・牛を馬ともなす・結句は人を馬と・なしてのり給いき、其の国の人あまりに・なげきしかば知らぬ国の人を馬となす、他国の商人の・ゆきたりしかば薬をかいて・馬となして御まやうにつなぎ・つけぬ、なにと・なけれども・我が国はこいしき上・妻子ことにこいしく・しのびがたかりしかども・ゆるす事なかりしかば・かへる事なし、又かへり・たりとも・このすがたにては由なかるべし、ただ朝夕には・なげきのみにして・ありし程に・一人ありし子・父のまちどきすぎしかば・人にや殺されたるらむ又病にや沈むらむ・子の身として・いかでか父をたづねざるべきと・いでたちければ・母なげくらく男も他国より・かへらず・一人の子も・すてて・ゆきなば我いかんがせんと・なげきしかども・子ちちのあまりに・こいしかりしかば安足国へ尋ねゆきぬ、ある小家に・やどりて候しかば家の主申すやう・あらふびんやわどのは・をさなき物なり而もみめかたち人にすぐれたり、我に一人の子ありしが他国にゆきてしにやしけん・又いかにてやあるらむ、我が子の事ををもへば・わどのをみてめも・あてられず、いかにと申せば此の国は大なるなげき有り、此の国の大王あまり馬をこのませ給いて不思議の草を用い給へり、一葉せばき草をくわすれば人・馬となる、葉の広き草をくわすれば馬・人となる、近くも他国の商人の有りしを・この草をくわせて馬となして第一の御まやに秘蔵して・つながれたりと申す、此の男これをきいて・さては我が父は馬と成りて・けりとをもひて・返つて問う其の馬は毛は・いかにと・といければ・家の主答えて云く栗毛なる馬の肩白く・ぶちたりと申す、此の物此の事を・ききて・とかうはからいて王宮に近づき葉の広き草をぬすみとりて・我が父の馬になりたりしに食せしかば本のごとく人となりぬ、其の国の大王・不思議なる・おもひをなして孝養の者なりと

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
千日尼御返事 59 阿仏坊尼 身延

日蓮大聖人御書

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千日尼御返事 1,321ページ

子は財と申す経文も・はんべり・所以に経文に云く「其の男女追つて福を修すれば大光明有つて地獄を照し其の父母に信心を顕さしむ」等と申す、設い仏説ならずとも眼の前に見えて候。
 天竺に安足国王と申せし大王は・あまりに馬をこのみて・かいしほどに・後には・かいなれて鈍馬を竜馬となすのみならず・牛を馬ともなす・結句は人を馬と・なしてのり給いき、其の国の人あまりに・なげきしかば知らぬ国の人を馬となす、他国の商人の・ゆきたりしかば薬をかいて・馬となして御まやうにつなぎ・つけぬ、なにと・なけれども・我が国はこいしき上・妻子ことにこいしく・しのびがたかりしかども・ゆるす事なかりしかば・かへる事なし、又かへり・たりとも・このすがたにては由なかるべし、ただ朝夕には・なげきのみにして・ありし程に・一人ありし子・父のまちどきすぎしかば・人にや殺されたるらむ又病にや沈むらむ・子の身として・いかでか父をたづねざるべきと・いでたちければ・母なげくらく男も他国より・かへらず・一人の子も・すてて・ゆきなば我いかんがせんと・なげきしかども・子ちちのあまりに・こいしかりしかば安足国へ尋ねゆきぬ、ある小家に・やどりて候しかば家の主申すやう・あらふびんやわどのは・をさなき物なり而もみめかたち人にすぐれたり、我に一人の子ありしが他国にゆきてしにやしけん・又いかにてやあるらむ、我が子の事ををもへば・わどのをみてめも・あてられず、いかにと申せば此の国は大なるなげき有り、此の国の大王あまり馬をこのませ給いて不思議の草を用い給へり、一葉せばき草をくわすれば人・馬となる、葉の広き草をくわすれば馬・人となる、近くも他国の商人の有りしを・この草をくわせて馬となして第一の御まやに秘蔵して・つながれたりと申す、此の男これをきいて・さては我が父は馬と成りて・けりとをもひて・返つて問う其の馬は毛は・いかにと・といければ・家の主答えて云く栗毛なる馬の肩白く・ぶちたりと申す、此の物此の事を・ききて・とかうはからいて王宮に近づき葉の広き草をぬすみとりて・我が父の馬になりたりしに食せしかば本のごとく人となりぬ、其の国の大王・不思議なる・おもひをなして孝養の者なりと


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