御書本文

一谷入道御書
1,329ページ

の敵よりも悪げにありしに・宿の入道と云ひ・妻と云ひ・つかう者と云ひ・始はおぢをそれしかども先世の事にやありけん、内内・不便と思ふ心付きぬ、預りより・あづかる食は少し付ける弟子は多くありしに・僅の飯の二口三口ありしを或はおしきに分け或は手に入て食しに・宅主・内内・心あつて外には・をそるる様なれども・内には不便げにありし事・何の世にかわすれん、我を生みておはせし父母よりも当時は大事とこそ思いしか、何なる恩をも・はげむべし・まして約束せし事たがうべしや。
 然れども入道の心は後世を深く思いてある者なれば久しく念仏を申しつもりぬ、其の上阿弥陀堂を造り田畠も其の仏の物なり、地頭も又をそろしなんど思いて直ちに法華経にはならず、是は彼の身には第一の道理ぞかし、然れども又無間大城は疑無し、設ひ是より法華経を遣したりとも世間も・をそろしければ念仏すつべからずなんど思はば、火に水を合せたるが如し、謗法の大水・法華経を信ずる小火を・けさん事疑なかるべし、入道・地獄に堕つるならば還つて日蓮が失になるべし、如何んがせん如何んがせんと思いわづらひて今まで法華経を渡し奉らず、渡し進せんが為にまうけまいらせて有りつる法華経をば・鎌倉の焼亡に取り失ひ参せて候由申す、旁入道の法華経の縁はなかりけり、約束申しける我が心も不思議なり、又我とは・すすまざりしを鎌倉の尼の還りの用途に歎きし故に口入有りし事なげかし、本銭に利分を添えて返さんとすれば・又弟子が云く御約束違ひなんど申す、旁進退極りて候へども人の思わん様は狂惑の様なるべし、力及ばずして法華経を一部十巻・渡し奉る、入道よりもうばにて・ありし者は内内心よせなりしかば是を持ち給へ。
 日蓮が申す事は愚なる者の申す事なれば用ひず、されども去る文永十一年太歳甲戌十月に蒙古国より筑紫によせて有りしに対馬の者かためて有りしに・宗総馬尉逃ければ百姓等は男をば或は殺し或は生取にし・女をば或は取り集めて手をとをして船に結い付け・或は生け取にす・一人も助かる者なし、壱岐によせても又是くの如し、船おしよ

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
一谷入道御書 54 一谷入道日学女房 身延

日蓮大聖人御書

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一谷入道御書 1,329ページ

の敵よりも悪げにありしに・宿の入道と云ひ・妻と云ひ・つかう者と云ひ・始はおぢをそれしかども先世の事にやありけん、内内・不便と思ふ心付きぬ、預りより・あづかる食は少し付ける弟子は多くありしに・僅の飯の二口三口ありしを或はおしきに分け或は手に入て食しに・宅主・内内・心あつて外には・をそるる様なれども・内には不便げにありし事・何の世にかわすれん、我を生みておはせし父母よりも当時は大事とこそ思いしか、何なる恩をも・はげむべし・まして約束せし事たがうべしや。
 然れども入道の心は後世を深く思いてある者なれば久しく念仏を申しつもりぬ、其の上阿弥陀堂を造り田畠も其の仏の物なり、地頭も又をそろしなんど思いて直ちに法華経にはならず、是は彼の身には第一の道理ぞかし、然れども又無間大城は疑無し、設ひ是より法華経を遣したりとも世間も・をそろしければ念仏すつべからずなんど思はば、火に水を合せたるが如し、謗法の大水・法華経を信ずる小火を・けさん事疑なかるべし、入道・地獄に堕つるならば還つて日蓮が失になるべし、如何んがせん如何んがせんと思いわづらひて今まで法華経を渡し奉らず、渡し進せんが為にまうけまいらせて有りつる法華経をば・鎌倉の焼亡に取り失ひ参せて候由申す、旁入道の法華経の縁はなかりけり、約束申しける我が心も不思議なり、又我とは・すすまざりしを鎌倉の尼の還りの用途に歎きし故に口入有りし事なげかし、本銭に利分を添えて返さんとすれば・又弟子が云く御約束違ひなんど申す、旁進退極りて候へども人の思わん様は狂惑の様なるべし、力及ばずして法華経を一部十巻・渡し奉る、入道よりもうばにて・ありし者は内内心よせなりしかば是を持ち給へ。
 日蓮が申す事は愚なる者の申す事なれば用ひず、されども去る文永十一年太歳甲戌十月に蒙古国より筑紫によせて有りしに対馬の者かためて有りしに・宗総馬尉逃ければ百姓等は男をば或は殺し或は生取にし・女をば或は取り集めて手をとをして船に結い付け・或は生け取にす・一人も助かる者なし、壱岐によせても又是くの如し、船おしよ


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