御書本文

千日尼御前御返事
1,311ページ

 かかるいみじき法華経と申す御経は・いかなる法門ぞと申せば、一の巻方便品よりうちはじめて菩薩・二乗・凡夫・皆仏になり給うやうを・とかれて候へどもいまだ其のしるしなし、設えば始めたる客人が相貌うるわしくして心も・いさぎよく・よく口もきいて候へば・いう事疑なけれども・さきも見ぬ人なれば・いまだ・あらわれたる事なければ語のみにては信じがたきぞかし、其の時語にまかせて大なる事・度度あひ候へば・さては後の事も・たのもしなんど申すぞかし、一切信じて信ぜられざりしを第五の巻に即身成仏と申す一経第一の肝心あり、譬へばくろき物を白くなす事・漆を雪となし・不浄を清浄になす事・濁水に如意珠を入れたるがごとし、竜女と申せし小蛇を現身に仏になしてましましき、此の時こそ一切の男子の仏になる事をば疑う者は候はざりしか、されば此の経は女人成仏を手本としてとかれたりと申す、されば日本国に法華経の正義を弘通し始めましませし叡山の根本伝教大師の此の事を釈し給うには「能化所化倶に歴劫無し妙法経力即身成仏す」等、漢土の天台智者大師・法華経の正義をよみはじめ給いしには「他経は但男に記して女に記せず乃至今経は皆記す」等云云、此れは一代聖教の中には法華経第一・法華経の中には女人成仏第一なりと・ことわらせ給うにや、されば日本の一切の女人は法華経より外の一切経には女人成仏せずと嫌うとも・法華経にだにも女人成仏ゆるされなば・なにかくるしかるべき。
 しかるに日蓮は・うけがたくして人身をうけ・値いがたくして仏法に値い奉る、一切の仏法の中に法華経に値いまいらせて候、其の恩徳ををもへば父母の恩・国主の恩・一切衆生の恩なり、父母の恩の中に慈父をば天に譬へ悲母をば大地に譬へたり・いづれも・わけがたし、其の中にも悲母の大恩ことに・ほうじがたし、此れを報ぜんと・をもうに外典の三墳・五典・孝経等によて報ぜんと・をもへば現在を・やしないて後生をたすけがたし、身をやしない魂をたすけず・内典の仏法に入りて五千・七千余巻の小乗・大乗は女人成仏かたければ悲母の恩報じがたし・小乗は女人成仏・一向に許されず、大乗経は或は成仏・或は往生を許たるやうなれども仏の仮言にて実事なし、但法華経

この御書の最初のページ前のページ
タイトル 聖寿 対告衆 述作地
千日尼御前御返事 57 阿仏房尼 身延

日蓮大聖人御書

検索結果詳細 御書本文

千日尼御前御返事 1,311ページ

 かかるいみじき法華経と申す御経は・いかなる法門ぞと申せば、一の巻方便品よりうちはじめて菩薩・二乗・凡夫・皆仏になり給うやうを・とかれて候へどもいまだ其のしるしなし、設えば始めたる客人が相貌うるわしくして心も・いさぎよく・よく口もきいて候へば・いう事疑なけれども・さきも見ぬ人なれば・いまだ・あらわれたる事なければ語のみにては信じがたきぞかし、其の時語にまかせて大なる事・度度あひ候へば・さては後の事も・たのもしなんど申すぞかし、一切信じて信ぜられざりしを第五の巻に即身成仏と申す一経第一の肝心あり、譬へばくろき物を白くなす事・漆を雪となし・不浄を清浄になす事・濁水に如意珠を入れたるがごとし、竜女と申せし小蛇を現身に仏になしてましましき、此の時こそ一切の男子の仏になる事をば疑う者は候はざりしか、されば此の経は女人成仏を手本としてとかれたりと申す、されば日本国に法華経の正義を弘通し始めましませし叡山の根本伝教大師の此の事を釈し給うには「能化所化倶に歴劫無し妙法経力即身成仏す」等、漢土の天台智者大師・法華経の正義をよみはじめ給いしには「他経は但男に記して女に記せず乃至今経は皆記す」等云云、此れは一代聖教の中には法華経第一・法華経の中には女人成仏第一なりと・ことわらせ給うにや、されば日本の一切の女人は法華経より外の一切経には女人成仏せずと嫌うとも・法華経にだにも女人成仏ゆるされなば・なにかくるしかるべき。
 しかるに日蓮は・うけがたくして人身をうけ・値いがたくして仏法に値い奉る、一切の仏法の中に法華経に値いまいらせて候、其の恩徳ををもへば父母の恩・国主の恩・一切衆生の恩なり、父母の恩の中に慈父をば天に譬へ悲母をば大地に譬へたり・いづれも・わけがたし、其の中にも悲母の大恩ことに・ほうじがたし、此れを報ぜんと・をもうに外典の三墳・五典・孝経等によて報ぜんと・をもへば現在を・やしないて後生をたすけがたし、身をやしない魂をたすけず・内典の仏法に入りて五千・七千余巻の小乗・大乗は女人成仏かたければ悲母の恩報じがたし・小乗は女人成仏・一向に許されず、大乗経は或は成仏・或は往生を許たるやうなれども仏の仮言にて実事なし、但法華経


  • 自由語検索
※複数入力の場合、単語をスペースで区切ってください。
検索オプション