御書本文

四恩抄
937ページ

を修行し奉ると存じ候、其の故は法華経の故にかかる身となりて候へば行住坐臥に法華経を読み行ずるにてこそ候へ、人間に生を受けて是れ程の悦びは何事か候べき。
 凡夫の習い我とはげみて菩提心を発して後生を願うといへども自ら思ひ出し十二時の間に一時・二時こそは・はげみ候へ、是は思ひ出さぬにも御経をよみ読まざるにも法華経を行ずるにて候か、無量劫の間・六道・四生を輪回し候いけるには或は謀叛をおこし強盗・夜打等の罪にてこそ国主より禁をも蒙り流罪・死罪にも行はれ候らめ、是は法華経を弘むるかと思う心の強盛なりしに依つて悪業の衆生に讒言せられて・かかる身になりて候へば定て後生の勤には・なりなんと覚え候、是れ程の心ならぬ昼夜十二時の法華経の持経者は末代には有がたくこそ候らめ、又止事なくめでたき事侍り無量劫の間六道に回り候けるには多くの国主に生れ値ひ奉りて或は寵愛の大臣・関白等ともなり候けん、若し爾らば国を給り財宝・官禄の恩を蒙けるか・法華経流布の国主に値ひ奉り其の国にて法華経の御名を聞いて修行し是を行じて讒言を蒙り流罪に行われまいらせて候国主には未だ値いまいらせ候はぬか、法華経に云く「是の法華経は無量の国中に於て乃至名字をも聞くことを得べからず何に況んや見ることを得て受持し読誦せんをや」と云云、されば此の讒言の人・国主こそ我が身には恩深き人には・をわしまし候らめ。
 仏法を習う身には必ず四恩を報ずべきに候か、四恩とは心地観経に云く一には一切衆生の恩、一切衆生なくば衆生無辺誓願度の願を発し難し、又悪人無くして菩薩に留難をなさずばいかでか功徳をば増長せしめ候べき、二には父母の恩、六道に生を受くるに必ず父母あり、其の中に或は殺盗・悪律儀・謗法の家に生れぬれば我と其の科を犯さざれども其の業を成就す、然るに今生の父母は我を生みて法華経を信ずる身となせり、梵天・帝釈・四大天王・転輪聖王の家に生まれて三界・四天をゆづられて人天・四衆に恭敬せられんよりも恩重きは今の某が父母なるか、三には国王の恩、天の三光に身をあたため地の五穀に神を養ふこと皆是れ国王の恩なり、其の上今度・法華経

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タイトル 聖寿 対告衆 述作地
四恩抄 41 工藤左近尉吉隆 伊東

日蓮大聖人御書

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四恩抄 937ページ

を修行し奉ると存じ候、其の故は法華経の故にかかる身となりて候へば行住坐臥に法華経を読み行ずるにてこそ候へ、人間に生を受けて是れ程の悦びは何事か候べき。
 凡夫の習い我とはげみて菩提心を発して後生を願うといへども自ら思ひ出し十二時の間に一時・二時こそは・はげみ候へ、是は思ひ出さぬにも御経をよみ読まざるにも法華経を行ずるにて候か、無量劫の間・六道・四生を輪回し候いけるには或は謀叛をおこし強盗・夜打等の罪にてこそ国主より禁をも蒙り流罪・死罪にも行はれ候らめ、是は法華経を弘むるかと思う心の強盛なりしに依つて悪業の衆生に讒言せられて・かかる身になりて候へば定て後生の勤には・なりなんと覚え候、是れ程の心ならぬ昼夜十二時の法華経の持経者は末代には有がたくこそ候らめ、又止事なくめでたき事侍り無量劫の間六道に回り候けるには多くの国主に生れ値ひ奉りて或は寵愛の大臣・関白等ともなり候けん、若し爾らば国を給り財宝・官禄の恩を蒙けるか・法華経流布の国主に値ひ奉り其の国にて法華経の御名を聞いて修行し是を行じて讒言を蒙り流罪に行われまいらせて候国主には未だ値いまいらせ候はぬか、法華経に云く「是の法華経は無量の国中に於て乃至名字をも聞くことを得べからず何に況んや見ることを得て受持し読誦せんをや」と云云、されば此の讒言の人・国主こそ我が身には恩深き人には・をわしまし候らめ。
 仏法を習う身には必ず四恩を報ずべきに候か、四恩とは心地観経に云く一には一切衆生の恩、一切衆生なくば衆生無辺誓願度の願を発し難し、又悪人無くして菩薩に留難をなさずばいかでか功徳をば増長せしめ候べき、二には父母の恩、六道に生を受くるに必ず父母あり、其の中に或は殺盗・悪律儀・謗法の家に生れぬれば我と其の科を犯さざれども其の業を成就す、然るに今生の父母は我を生みて法華経を信ずる身となせり、梵天・帝釈・四大天王・転輪聖王の家に生まれて三界・四天をゆづられて人天・四衆に恭敬せられんよりも恩重きは今の某が父母なるか、三には国王の恩、天の三光に身をあたため地の五穀に神を養ふこと皆是れ国王の恩なり、其の上今度・法華経


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